くさめして父の一枚着せらるる

これも古い句です。たぶん黴かなにかのアレルギーだと思うのですが、実家に帰るとくしゃみが出るのです。それもひっきりなしに。寒いわけではないのだが、と思いながら、母の出す父の服を素直に着られるようになったのは大人になってからでした、、、。(2001年冬詠)

暮早し老舗旅館の長廊下

旅館に泊まること自体がなくなってしまいましたが、昔はありましたね、建増し建増しで迷路のように廊下がつながった旅館が。安く泊まろうとするものだから端っこのほうの部屋で、食事に指定された広間まで行くのに迷子になってしまうようなことが、、、。それはそれとして、掲句はれっきとした老舗旅館、、、。(2000年冬詠)

ひげ面の男正座で注連作る

昨年の11月28日の日付がある。倉敷阿智神社での句。境内の一角の周囲をビニールシートで囲ったテントの中で、男性が三人並んで注連縄を作られていた。少しだけ見学させていただいたが、本殿の正面に飾る大きな注連縄の部分とのことだった。流石に大きな神社ではこの時期からもう注連縄の準備をされるのだと感心したものだった、、、。(2013年冬詠)

凩や露店に並ぶ金時計

今年は早々と10月に木枯一号のニュースが流れた。あの日は「んっ?今日の風はまるで木枯のよう」と思ったが、ホントに木枯だったようだった、、、。掲句はさっぱり記憶にないのだけれど、2001年の句稿にあった句。近辺の句を見ると、この年の町内会の旅行が出雲大社だった。その時の句かも、、、。(2001年冬詠)

当然のやうに猫ゐる冬日向

朝の散歩の途中、田圃二枚ほど離れた畦道でじっとしている猫がいる。「おーい」と呼ぶとこちらを見て怪訝そうな顔をしている。どこかで見た猫のようだったので「元気にしとるんかあ」と声をかけておいた。もちろん返事はなかったが、、、。その日の夕方、外で妻が何やら大きな声をしているので出てみると、一年ほど前に我家に居候していた猫が帰って来たと喜んでいる。えっ?まさか、と思ったが「ニャー」と声がしたところに居たのは、確かに朝の散歩の途中にいた猫だった。あれから一週間、強そうになって戻ってきたアメリカンショートヘアーの雑種の雄猫は、我家の物置の横でゆうゆうと身体の手入をしている、、、。(2013年冬詠)

七五三待つ子が覗く社殿裏

本来の七五三は11月15日、すなわち今日なのですが、その前後でもよく見かけます。掲句は昨年の11月28日の作句日付、倉敷阿智神社です。同じ阿智神社で今年は10月23日に見ました。日が良かったのでしょうね、本殿では結婚式が、奥の若宮殿では七五三がと、神様も大忙しのようでしたよ。もちろん、その時の句もありますが、それはまた来年に、、、。(2013年冬詠)

銀杏落葉川を隔てし大樹より

通勤途中に見つけた銀杏落葉、一瞬そこに銀杏の落葉があることが不思議で、辺りを見回すと川の向うに大きな銀杏の木があった。それまで銀杏の木があることに気づかなかった。たぶん下ばかり向いて歩いていたのかも知れない、、、。(2000年冬詠)