狂ひたる蝉一晩を鳴き明かす

我家の庭からも毎年何匹もの蝉が出てくる。時たまこういう蝉がいる。暑くて眠られない夜が、よけいに眠られなくなってしまう。困ったものだが、かと言って夜中に庭に出て昆虫採集も出来ないし、もんもんとして朝を迎えることになる、、、。(2008年夏詠)

蝉鳴いていよいよ暗し杉木立

今年の初蝉は七月六日でした。いつもの散歩道の桜並木の土手です。もう梅雨が明けますね、というのが毎年この土手で聞く蝉の声ですが、その通り七月八日に梅雨が明けました。掲句の杉木立は別の場所ですが、土手の桜並木もこの時季は結構暗いです、、、。(2003年夏詠)

犬の鼻触れて落蝉生き返る

散歩していると落蝉に出会う。落ちたときのひっくり返った姿のままで力尽き、やがて静かに死を迎えるのだろう。そんなところに犬の鼻が近づいて来るものだから、蝉はおちおち死んでも居られない。息を吹き返した蝉はジジジジと激しく鳴きながら、またどこかへ飛んでいった。(2010年秋詠)

ドップラー効果蝉音の下行けば

ピーポーピーポーと救急車が近づいてきて、目の前を通り過ぎると途端にピーポーの音の高さが変わりませんか。あれをドップラー効果と言います。近づいてくる物から出る音は高く、遠ざかる物から出る音は低く聞えるのです。蝉音にドップラー効果なんて在る訳はありませんが、ニイニイ蝉の鳴いている木の下を通ると、そんな気がしませんか。(2011年夏詠)