冬終へる毎日違ふ雲を見て

四国での二ヶ月間には沢山の句を詠みました。もっと書けば良いのですが、少し魂胆があってここには既発表の句を中心に書きました。これで一先ず終りにしますが、また来年あたりに書くと思いますが、、、。最後の日はこっそりと帰ろうと、一人一人に挨拶をして周ったのですが、そうは行きませんでした。皆さんに集まっていただき、抱えきれないような花束まで頂きました。四国の皆さんにも、そのためにわざわざ本社から来ていただいたH課長にも、そして何より津山で私を支えていただいた皆さんに、心からお礼申し上げます。<阿南8>(2011年冬詠)

犬猫に鴉にとんび寒施行

来るもの拒まずの寒施行ですが、鳶はお腹が空いていても自分の翼が引っかかるような所へは下りてきません。というのは前ぶりです、、、。もうずい分前の冬のことになりますが、「とんびに油揚げをいただいた」ことがあります。河原を散歩していると、土手の上で鳶が三羽争っているのが見えました。「おいおい、喧嘩はやめなさい」と、通り過ぎようとしたとき、一羽が黒くて長いひも状の物を掴んで飛立ちました。続けて二羽も飛立ち、空中でしばらく争っていましたが、とうとうそのひも状の物を放してしまいました。あ~っと言う間もなくそれは岸辺の枯茨の中へポトン。三羽はそのまま川を越えて飛び去って行きました、、、。黒くて長いので蛇だろうと思いましたが、生来の怖いもの見たさで見に行くと、なんと大きな鰻ではありませんか!前ぶりの通り、鳶は枯茨には近づかないのは知っていましたが、念のためそのままにして散歩を続け、帰りに見るとやはりそのままでした、、、。で、なぜかポケットにレジ袋があったので、遠慮なくいただいて帰りました。捌いてその日の夕食に。もちろん犬にも猫にもお相伴を、、、。長さ55Cm強、油ののった鰻でした。なぜあの時季に鰻なのか、未だにわからない、嘘のような本当の話です、、、。(2012年冬詠)

雪だるま目鼻くずれて泣きさうに

雪晴の日は日暮れても何処となく明るさが残っています。早めに残業を終えて歩いて帰ると、そこここに子どもたちの遊んだ跡が残っています。スコップや橇が放り出されたままだったり、作りかけの小さなかまくらだったり。掲句は途中にある公民館の広場にあった、解けかけた雪だるま、、、。(2010年冬詠)

粉雪のやがて牡丹となる気配

雪国の方には申し訳ない話です。朝起きて散歩に出ようとすると、明けきらない暗い空から白い物がちらつき始めています。しばらくすると霰交じりの粉雪に変わり、やがて大地を覆って行きます。この頃になると、大地の濡れ具合や降る状態で、積る雪かすぐ解ける雪か分かってきます。大地が白くなったあたりから雪が少し大きくなり、激しさを増してくると積ってきます。積りそうだと思うと楽しくなってきますが、その状態がどれくらい続くかです。ほんとに大きな牡丹雪に変わる頃には気温が上がり、積もりつつ解けつつといった状態になり、やがて雪は底をついてしまいます、、、。(2009年冬詠)

挨拶にもらふ白菜四つほど

これは実家の隣の、昨日とは別のお婆さんです。分からない事があれば聞きに行き、いろいろお世話になっています。この時もお聞きしたい事があって挨拶がてら伺ったのですが、帰りにはこれしか無いからと大きな白菜を四つも持たされてしまいました、、、。(2009年冬詠)

冬耕や地につくほどに腰曲げて

実家の近所の一人暮らしのお婆さん、亡くなった私の母と歳はそう離れていないと思いますが、相変わらずお元気で、天気が良ければ曲がった腰をさらに曲げて畑をされています。家は私の実家から直線距離で30mほど、正面ではありませんが良く見えます。おかげで防犯カメラが要らないぐらいに良く観察されています。どこでも年寄りの楽しみは同じですね、、、。(2009年冬詠)

寒の雨窓にムンクの顔がある

特に何があった訳でも無く、引き継ぎの仕事は順調に進んでいた。むしろ順調すぎて、外を見る時間が増えていた。ひどい雨だった。二階にある事務所の窓は一日中雨に打たれ、外は午後三時を過ぎるともう薄暗くなっていた。窓ガラスはしだいに透明度を落とし、しだいに室内の様子が映るようになって行った。窓際に立つと、パソコンに向かう女子社員の横顔を背景に、自分の顔が映っていた、、、。<阿南7>(2011年冬詠)

下町に音のいろいろ花八手

機関区の周りに多いのは、やはり鉄道関係の会社や工場ですが、それ以外にも小さな町工場がたくさんあって、いろいろな音が通りに漏れてきます。突然シューッと音がして、道路脇の溝に伸びたパイプから蒸気が噴出したりすることも、、、。(2012年冬詠)

機関区の大戸閉ざされ冬ざるる

あれ~、秋には大きな戸が開いて、中に何台も電車の車両が見えたのに、冬には閉められるんだ。と思いながら周囲をうろうろしていると、すぐ側の高架をマリンライナーが通過して行きました、、、。機関区の中に社員食堂があり、「一般の方もどうぞ」、と書いてあるので昼食を食べに入りました。私以外に一般の人は見当たらず、現役の方々の間に入るのは肩身が狭い感じがしましたが、鉄道マンに混じって「うどんセット」を食べてきました、、、。味は私には懐かしい、いわゆる社員食堂の味でした。値段は安いです。その上「ご自由にどうぞ」と書いて温かいコーヒーが置いてありましたので、ついでにこれもいただいて帰りました、、、。鉄道マニアではありませんが、岡山駅の西口から機関区があるこの一角は楽しいところです、、、。(2012年冬詠)