実南天廃屋裏の勝手口

廃屋となっている大きなお屋敷、路地を入ると道路沿いに塀が続き、奥まった所にこじんまりと門がある。と思いきや、「○○勝手口」と書かれた木札がかかっている。とすれば大きな勝手口。勝手口と建物との間には育ちすぎた南天がたわわに実をつけている。もうここから入るのは困難だろう。木枠の窓ガラスが見える。映る景色の屈折した光は明らかに古硝子だ。いったいどんな方のお屋敷だったのだろうといつも思う、、、。(2017年冬詠)

静けさに振子の刻む寒の時

我が家の掛時計はいまだに月に一度ゼンマイを巻くタイプです。大きな低い音で時を知らせます。振り子は一定のリズムで時を刻んでいきます。子供の頃もそうでした。古い大きな掛時計があり、病気がちだった私はその下に敷かれた布団の中でひたすら耐えていました。動くものと言えばその振り子だけで、いつの間にかそのリズムが頭の中にも刻まれて、今ではどこにいてもそのリズムが刻めるのです、、、。(2017年冬詠)

家一戸更地に変はり日脚伸ぶ

この地に住み着いた頃にはすでに空家だったから、かれこれ三十年以上は目にしてきたことになります。古い農家の大きなお屋敷です。とうとうその家の解体が始まり、なんだか寂しいような気がしていましたが、終わってみると残された大きな立木や広くなった跡地にに燦燦と日差が溢れて、、、。(2017年冬詠)