鳴り継いで踏切次へ日脚伸ぶ

しばらく大きな音が続いてその後に遮断機が降りてくる。音は小さめになりその頃には少し先にある次の踏切が大きな音で鳴り始めている。ちょうど一つ前の踏切を電車が通過する頃だ。まるで一月の次に二月が来るのと同じよう、、、。(2020年冬詠)

弱く押し強く引く鋸日脚伸ぶ

今年の年賀状で使った句です、、、。少しずつ、少しずつ太陽の位置が高くなり、少しずつ、すこしずつ昼間が長くなって行きます。一年で一番楽しみな季節です。寒さはこれからなんですけどもね、、、。(2018年冬詠)

家一戸更地に変はり日脚伸ぶ

この地に住み着いた頃にはすでに空家だったから、かれこれ三十年以上は目にしてきたことになります。古い農家の大きなお屋敷です。とうとうその家の解体が始まり、なんだか寂しいような気がしていましたが、終わってみると残された大きな立木や広くなった跡地にに燦燦と日差が溢れて、、、。(2017年冬詠)

日脚伸ぶロダンの像の脚長く

ははは、昨日が冬至で今日いきなり日脚が伸びる訳がないですね。でもグラフで言えば昨日がどん底で、今日からは右肩上がり。伸びていくのですよ、少しずつ、少しずつ、、、。掲句は倉敷大原美術館の分館前のロダンの像、、、。(2013年冬詠)

背表紙に残る金文字日脚伸ぶ

たぶんこの頃からだったと思います、古本市で沢山の本を貰ってくるようになったのは。古本市も今は図書館の入っているビルの一角でこじんまりと行われますが、当時は商店街の空き店舗を何ヶ所も使った、町おこしのイベントでした。一年で読み切れないほどの本を貰っていました。そんな中の一冊です。何の本だったか忘れてしまいましたが、昔の本の装丁にはずいぶん凝ったものがありました。書き手が一流なら、装丁をする方も一流。古本の黴っぽい匂いの中で、剥げかけた背表紙の文字を眺めていると、それだけでいっぱしの文士気分になれるのです、、、。(2003年春詠)