歳月人を待たず、早いですね。もう十二月ですよ、、、。古い句ですが、こんな句を詠んでいました。母を買物に連れて行くと、母はこうして私に読ませて、値段や日付を確かめながら買いました。問題は父で、父と行くと、父は値段も日付もお構いなしで、次々とカゴに入れて行きます。すぐ側に同じ新しい日付の商品があるのに。ようするに、眼鏡を忘れて小さい字が読めないことを、悟られたくなかったのでしょうね、、、。(2001年冬詠)
精米所軒を灯して暮早し
近所の米穀業者、稲刈が始まる頃から年内ぐらいは忙しそうにされている。工場の外に早々と灯りを点けて、フォークリフトが忙しく走りまわっている。ちょっと遅く散歩に出ると、ちょうど土手の上からその光景に出会うことになる。職種は違うが、何だかなつかしい、それでいてちょっと寂しい気持ちになる。四年前の今頃は、、、。(2013年冬詠)
警笛の軽し小春の一両車
暖かいと心まで軽くなる。心が軽くなれば列車の警笛まで軽く聞こえる。相変わらずコトコトコトコト一両車、昼間はほとんどすいている、、、。(2014年冬詠)
一雨に進む季節や新走
ちょっと(を通り越して)寒くなってきました。新走(あらばしり)は今年酒、新酒のこと、歳時記では秋に分類されています。昔は仕込みが早かったのですね。私はてっきり酒造りは寒い時期の仕事とばかり思っていました。と言うのも、私が子供の頃は田舎のお百姓の男衆の多くが、冬の間は酒造りの出稼ぎに行っていた記憶があるからです、、、。私はのんべえでは有りませんが、のんべえの皆様、お酒の美味しい季節になりましたね、、、。(2013年冬詠)
警備員銀杏落葉をながめつつ
倉敷中央通りの銀杏も、もう散っている頃だろうか。掲句は昨年の27日、通りに面した観光バス駐車場の警備員さんが、バスの出入りがないと手持無沙汰なのだろう、緊張感なく銀杏落葉を眺めている姿があった。ちょっと遠くから見るといい感じ、絵になる(いや、句になった)、、、。(2014年冬詠)
小春日や笠は黄色の女車夫
昨年11月、倉敷美観地区での句です。人力車もずいぶん増えたなあと思いながら追い越した時に、黄色の笠が目に入った。あれっと思って見ると女性だった、、、。(2014年冬詠)
尻上げて足で日を蹴る川の鴨
11月15日が狩猟解禁日です。例年のことですが狩猟解禁日を過ぎると、一週間ぐらいは川の鳥の数が少なくなります。最近は猟師も空の薬きょうも目にすることが無いのですが、それでも解禁日を過ぎると確実に少なくなります。どこかに安全な場所があって、解禁日からしばらくはそこへ避難するように、本能に埋め込まれているのかも知れませんね。そして十日、川には賑やかな声が聞こえています、、、。掲句は昨年、日差を浴びながら水草を啄ばむ、安心しきった姿の鴨、、、。(2014年冬詠)
冬ぬくし寄り添ふやうに犬のゐて
なんだか暖かい冬ですね。おかげで犬との散歩では助かっています。何しろリードを持つのにまだ手袋が要らないのですからね。エルニーニョの影響で、今年は暖冬ドカ雪だそうです。とは言うものの、そろそろ冬用のタイヤにしておかないと、油断しているとドカンとやられるのです。掲句は去年、寒い中の暖かい日でした。愛犬もみじは付かず離れず、主人と同じで顎のあたりに白いものが増えたものの付かず離れずの毎日です。昔と比べればおとなしくなりました。今では叱ることもほとんど無くなりました、、、。(2014年冬詠)
古書市の外は時雨の一葉忌
古い事になるが、毎年行われる図書館主催の無料の古本市に、一時期復刻本が多数出ていた事があった。著名な作家の作品を、装丁まで初版の状態で復刻したもので、何冊もいただいて帰った。本の状態はすこぶる良くて、読まれた形跡のないものがほとんどだった。その中に一葉の「たけくらべ」もあった。たぶん興味があってセットで購入したものの、読まずにそのまま保存されていたのだろうな、と思いながら開くと、本文がくずし字で書かれていて全く読めなかった。結局そのままで翌年手放すことになってしまった、、、。(2914年冬詠)
蟷螂の拝む形で枯れにけり
朝の道に蟷螂がいる。暖かい間は、近づくだけで大きな鎌を振り上げて身構えていたが、今はただじっとしているだけ。生きているのか死んでいるのか、頭の前の大きな鎌も、祈りの形にしか見えない、、、。(2014年冬詠)