緑蔭を洗ひて川の速さかな

夏になると用水の水量が増えるのは田植の準備のせいだろうと思う。掲句は例によって西川緑道公園での句で、この川が直接田圃と関係があるのかどうかは知らないが、初夏の頃は水量が増える。もともと水量は川幅いっぱいあり豊かなほうだと思うが、それがさらに増えてとうとうと流れる様は気持ちが良い。両岸の木々も緑が濃くなり川面に影を落としている、、、。(2014年夏詠)

オカリナの止めばのどけし昼の鐘

オカリナの合奏が終わったときに、偶然どこからかお昼の鐘が聞えてきた、という岡山西川緑公園の街角コンサートでの句です。子供の頃の田舎には各家に有線放送の設備があって、決まった時間になるとラジオの番組が流れてきました。代表的なのが日曜日のお昼のNHKのど自慢で、その鉦の音は今でも耳に残っているような気がします。それも合格の鉦ではなく、二つとか三つ鳴るときの絶妙の間合いは、最高だったなあ、、、。(2013年春詠)

外来種まじりて亀の鳴きにけり

倉敷のアイビースクエアの隅のほうに小さな池があり、たくさんの亀がいる。狭い岩場が作ってあって、春先には亀たちがぎゅうぎゅう詰めになって日差を浴びている。遅れをとった亀が、その日を浴びている亀の上に上ろうとするのだが、上手く足がかからず、途中まで上ってはごろごろドブンと落ちてしまう。それでも懲りずに、何度も何度も上っては落ちている。そのごろごろドブンの時の音がなんだか悲鳴のように聞え、本当に亀って鳴くのかも知れないと思った。掲句は別の場所の亀で、アイビースクエアの池には外来種は見当たらなかった、、、。(2014年春詠)

蛇穴を出づ昨日とは違ふやつ

今年は寒暖の差が大きい春だったせいか、ずいぶん早くから蛇の姿を見ました。暖かいからと出てきたら次の日は寒くて、逃げようにも動けないでいる、だからよけいに目に付いたのかも知れません。丸まっていたり、伸びられるだけ伸びていたり、中には折りたたむような形をして日を浴びているのですが、動きが遅いものだからじっくりと観察出来るし、怖くもない。あ、怖くないと思うのは実は早春のこの一時期だけで、蛇は苦手です。今年は数も多そう、今ではほぼ毎日出会います、、、。(2014年春詠)

ぼうたんや幟はためく方に寺

平日のほうが人が少ないだろうと思って出かけた近所のぼたん寺、知った人に遇うことはないだろうと思っていたのに見覚えのある顔、向こうも気づいたようで、どちらともなく近寄って握手を交わしました。かつての会社の同僚でした。彼もすでに退職していて、年賀状で近況を知るぐらいだけだったのですが、何はともあれ元気そうな姿を見て安心しました。ブログ用の写真撮影とのことでしたが、早速送られてきた写真が素敵だったので、チョイと拝借してしまいました、、、。(2013年春詠)

大川に垂れて水漬ける藤の花

散歩に行く吉井川の河川敷公園の水辺に、たぶん工事の際に土の中に混じっていたのだろう、山藤の蔓が育ち、立ち上がるには支えが無いので、ちょうど葛が地を這うような形で、斜面を覆っている。年毎に大きくなり、今では結構見ごたえのある状態にまで育ち、満開の花の側を通ると咽るような香に包まれる。ちょうど川幅いっぱいに水がある場所なので、花は水の中にも垂れ、流にゆれている、、、。(2014年春詠)