老犬に田の畦狭し曼珠沙華

老化は足からと散歩に連れ出した老犬、視力は以前から衰えていたが、とうとう狭い畦道で足を踏み外すようになってしまい、もう散歩は無理だなと判断した頃の句です。あれから三年、また夏を越して曼珠沙華の季節を迎えることができました。他の犬たちからも別格と見られているようで、勝手気ままな老後を過ごしています、、、。我家の敬老日風景、、、。(2010年秋詠)

秋夕日ポポの実ひとつ落つる音

ポポとか、ポーポーとか、ポポーとか呼ばれている北米原産の果物で、日本へは明治の頃に持ち込まれたらしいです。モクレン科で、真っ直ぐな木に朴のような葉をしています。果実は大きなアケビのようですが、色は緑、アケビのように熟しても割れません。味はなんとも表現が難しいですが、好き嫌いのはっきり分かれる味で、私はどうも、、、。植えたのはずいぶん前ですが、生り出したのはほんの数年前です。採り頃がわからず待っていると、熟したら勝手に落ちてきます。実も大きいので、音も大きな音がします。掲句はその瞬間です、、、。(2012年秋詠)

どれもみな笑顔の地蔵曼珠沙華

昨日登場の道の駅近くに円城ふるさと村があり、本宮山円城寺があります。その山門脇のお地蔵様です。道の駅と同じで、平日には人影もなく、ゆっくりと時が流れています、、、。母のところへ呼び出されることが増えていましたが、まだ亡くなるなんて思いもせず、平日なのを良いことに寄道をしては吟行をしていました。あれから二年、早いものです、、、。(2011年秋詠)

露座売りの椅子に居眠る秋日和

国道429号線は津山から山の中を通り足守に抜けます。途中の峠に道の駅「かもがわ円城」があります。小さな道の駅ですが、休日にはライダーで溢れ返ります。平日は、と言うと掲句のような状態で、ゆっくりとした時が流れています、、、。(2011年秋詠)

音たてて鯉が草食む秋の朝

何のこっちゃ、と言った句ですみません、、、。たまたま朝早く衆楽園に行く機会がありました。何年か前に池に鯉ヘルペスが発生して、今ではほとんど鯉の姿がありませんが、まだ大きな鯉がたくさん寄ってきていた頃です。池の周囲を巡っていると、岸辺でなにやら音がします。何だろうと覗いてみると、大きな鯉が何匹も岸辺に頭を出して、水際の草を食べているのです。池の周囲に何ヶ所かそういう光景が見られました。「へえ~、鯉も草を食べるんだ」と不思議な気がしましたが、これって、犬や猫が草を食べるのと同じような理由なのでしょうか、、、?(2002年秋詠)

伸びきつて畦に日を浴ぶ秋の蛇

蛇が好きな訳ではありませんが、田舎暮らしをしていると嫌でもお付き合いをしなければなりません。これは稲刈後の田圃の畦道の蛇です。蛇も秋が進むと暖かさを求めるようになります。昼間のほてりが残るアスファルトに暖を求めるのでしょう、朝の散歩では夜のうちに車に轢かれた蛇をよく目にします。そうそう、蝮の被害が多いのもこれからの季節と聞いたことがあります。野山の散策の際にはご注意を、、、。(2002年秋詠)

まつすぐに刈田横切り猫帰る

そろそろ稲刈が始まりました。見通しが良くなった田圃を縦断して、真っ直ぐに帰ってくる朝帰りの猫を見たときの句です。猫は本来夜行性の動物ですから、人間ならさしずめ夕方の帰宅と言ったところでしょう。一歩一歩新しい稲の切株を越えて来るゆったりした足取りには、満足の中にも多少の疲れが見えるのでした、、、。(2002年秋詠)