夏の間は青田の中に首だけ出していた白鷺が、秋になると川沿いの木の上であったり、川べりの浅瀬であったりに群れている。群れているだけで、それぞれ違う方向を見てじっとしている。白鷺はいつ会話をするのだろう。番になるにも会話が必要だろうと、いらぬお節介を考えたりするのです。(2012年秋詠)
カテゴリー: 2012
湯の宿の莚に干され唐辛子
我家から奥津温泉までは車で三十分ほどで行けます。途中に大きな苫田ダムのダム湖があります。ダム湖を見て一休み、それから国道をそれて奥津渓に入って行きます。どちらもこれからが良い季節です。奥津では近年町おこしに各種唐辛子製品が売られています。ドレッシング、一味、醤油、もちろん唐辛子そのものも。そんな訳でこんな風景に出会ったのですが、莚の上で秋日を受ける唐辛子は普段にも増して真っ赤に見えました。(2012年秋詠)
水脈引いて川渡りきる秋の蛇
夕暮れ時に川べりを散歩をしていると、何かが川面をこちらに向かってくるらしい水脈が見えました。普通ならその先端に水鳥の姿があるのですが、それが無い。よくよく見ると、少しだけ頭をもたげた蛇が泳いでくるのです。川幅の狭い浅瀬なら何度も見たことがありますが、吉井川の堰の上流で、十分な川幅の場所を泳いで渡る蛇なんて、初めて見ました。ついつい渡りきるまで見てしまいました。渡りきると蛇は躊躇なく傍の草むらに紛れてしまいました。(2012年秋詠)
秋風や石灰岩は骨の色
井倉洞吟行<その8>句会の後はしばらく風景を堪能、その後駅まで皆さんをお送りして解散となりました。私はついでに「絹掛の滝」に寄り、お不動様にお参りして帰りました。帰りは方谷から北房へ山道を抜けましたが、山の中の田圃は稲刈りの真っ最中でした。これで井倉洞吟行は終わりです。お付き合いありがとうございました。-終わり-(2012年秋詠)
落鮎の口のへの字に焼かれけり
生るるごと洞より出でし秋の昼
井倉洞吟行<その6>さて、入洞組三人は一つでも多く句材を拾おうと、足も遅く(運動不足もありますが)、広場があれば忘れないうちにと手帳を広げたりするものですから、結局吟行の一時間を洞の中で過ごしてしまいました。先生が足を滑らせるという危ない場面もありましたが、事無きを得、無事に地球の胎内から生還したのはちょうどお昼でした。橋の上から眺めた高梁川の河岸に彼岸花が数本咲き始めていました。-続く-(2012年秋詠)
億年のしずくとなりて滴れり
井倉洞吟行<その5>夏の季語になりましたが、ここにこれ以上の季語はないでしょう。鍾乳洞を見るたびに悠久の時を想います。一滴一滴の積み重ねが、やがて億年の時を経てこの鍾乳洞を造り上げ、さらにその滴りは未来へと繋がっていくのです。私が眺めているのは、その途方も無い時の流れのほんの一瞬なのだと、そんなことを想うのです。-続く-(2012年秋詠)
洞穴に入りて恋しき秋暑かな
井倉洞吟行<その4>井倉駅で先生、美女三人と合流、再び井倉洞まで歩きました。井倉洞では先に昼食と句会の席を予約した後、入洞組と残留組に分かれての吟行となりました。私は入洞組で、久しぶりに地底の冷気を体感しました。予想はしていましたが、Tシャツ一枚の身体には十分な寒さで、外の暑さが恋しく感じられました。-続く-(2012年秋詠)