機関区の大戸閉ざされ冬ざるる

あれ~、秋には大きな戸が開いて、中に何台も電車の車両が見えたのに、冬には閉められるんだ。と思いながら周囲をうろうろしていると、すぐ側の高架をマリンライナーが通過して行きました、、、。機関区の中に社員食堂があり、「一般の方もどうぞ」、と書いてあるので昼食を食べに入りました。私以外に一般の人は見当たらず、現役の方々の間に入るのは肩身が狭い感じがしましたが、鉄道マンに混じって「うどんセット」を食べてきました、、、。味は私には懐かしい、いわゆる社員食堂の味でした。値段は安いです。その上「ご自由にどうぞ」と書いて温かいコーヒーが置いてありましたので、ついでにこれもいただいて帰りました、、、。鉄道マニアではありませんが、岡山駅の西口から機関区があるこの一角は楽しいところです、、、。(2012年冬詠)

近道に抜ける公園冬菫

平日の昼間は居ないのをいい事に、娘の駐車場へ車を置き句会へ向かう。大通りを渡り、民家と町工場が混在する脇道に入る。しばらく歩くと一角に小さな公園があり、ここのトイレを借用する。トイレは道路側の手前にあり、生垣の角に少しだけ隙間が設けてある。看板のある入り口は角を曲がって、トイレから対角線のあたりにあるので、さしあたり裏口といったところか。たいてい人影はない。大きな楠木が一本、あとは滑り台やらブランコやら花壇やら、動物の形の乗り物が数体。トイレから出ると迷わず公園の中を斜めに横切って行く。ここを過ぎるとJRの機関区がある一帯に出る。(2012年冬詠)

冬ざれや帽子褪せたる石地蔵

続いて本山寺。昨日の道に入る手前から石段を登ると、比較敵新しい観音像があります。その後に小さな石地蔵が何体かありますが、こちらは表情もはっきりとは見えないような古い石地蔵です。何年ぐらい経つのでしょうか、赤い毛糸の帽子もすでに色褪せて、苔が生えたりしています。(2011年冬詠)

七草やB定食に回鍋肉

「看板に”うどん”と書いてあるのに中華料理の店、ウエイトレスも中国人で、日本語があやふや、B定食を頼んだらA定食が出てくる。」というので、昼食を食べに行ってみました。確かに”うどん”の看板があり、出てきたウエイトレスは片言の日本語、迷わず「B定食」を頼むと、出てきたのは入口に出ていたサンプルの”B定食”でした。あれっ、別におかしくはないね、、、。ボリュームはあるし、味もそこそこ、結局気に入って四国にいる間は週に何回も通うことになりました。昼食時はいつもほぼ満席でしたが、夜に行くとほとんど客はなく、短髪の若い料理人が作務衣姿で賄いの夕食をとっていたりしました。これなら”うどん屋”でもいいか、と思いましたが、彼もしゃべるのは片言の日本語でした、、、。<阿南6>(2012年新年詠)

縁起物ほどの御降ありにけり

愛犬もみじの楽しみと言えば食べることと散歩。どちらが大切かと言うと食べることで、食事の前に散歩に出ると、早々に切り上げて帰ろうとする。食事の後に出ると、小一時間かけて、隣の隣の町内ぐらいまでは行く。食事は決まった時間にしか貰えないが、散歩はうまくすれば連れて行ってもらえるからと、私が家にいる間はたえず狙っている。私が二ヶ月間四国に行っていた間はどうしていたかと聞くと、知らん顔して寝ていたというから、、、。さて初詣から帰って、二度目の散歩に出ようとしたらパラパラと御降があった。一応傘を持って出たが、傘を差すほどでもなく御降は終った。御降は豊穣の前兆と言うから、まあこれも縁起物で、多少はあった方が良いのだろう、、、。(2012年新年詠)

街さびれ響く聖歌のなつかしき

日曜日、久しぶりに古いアーケード街を歩いてみた。人通りも少なく、開いている店も少ない。暗い。時たま明るくなるのは、取り壊されて青空が見える所、駐車場になっていたり、ブルーシートがかけられ重機の腕が伸びている、今まさに工事中のところ、、、。あの店はどうなったかな、と記憶の中にある店を探して歩いてみた。ずいぶんお世話になった本屋さん、この辺に画廊があったなあ、相変わらずいい匂いのモダン焼き、一軒だけになったパチンコ屋からはカラカラカラカラと玉の流れる音がしていた、、、。(2012年冬詠)

一葉忌活字にもある女文字

学生時代に文学座の公演の大道具を組み立てるアルバイトをしたことがあります。給料は無しで、代わりに公演を見せてもらえるというのが条件で、文学少年にはもってこいの話でした。その文学座の公演が樋口一葉の「にごりえ・たけくらべ」でした。大道具を組み立てるのは見事な熟練の技で、言われたとおりに物を運んでいるうちに終ってしまいました。あとは舞台に合わせてのリハーサルを見ながら本番を待ちます。若い男優が何度も何度も、位置を変えては発生練習をする姿が印象的でした。杉村春子さんや荒木道子さんは本番で見ただけです。着物姿の杉村春子さんが蛇の目傘を開いて、舞台を下がったところで幕、その片手で傘を開く姿の粋だったこと、、、。(2012年冬詠)

鋤きこみし落葉大地の糧となれ

今年は落葉に負けないように掃いた。こんなにも日々刻々と落葉するものなのだと感心した。風にも負けないように掃いた。朝のうちに必ず風の止む時間があるのも発見した。そんな落葉を庭の小さな畑に埋めた。大地に返してやるのが一番だろう、、、。(2012年冬詠)

霜晴やジェット機雲を育てつつ

「霜晴の一直線の寒さかな」についてのコメントありがとうございました。いろいろ考えてみましたが、良い案が浮ばず、近詠句に置き換えました。これも空が明るくなり、遠くの山の上に朝日が顔を出し始める頃でしたが、晴れた空に力強く伸びていく飛行機雲が印象的でした。そうそう、この雲も一直線でした、、、。(2012年冬詠)