浅春や切口白き庭の木々

二十年以上になる庭の蝋梅の木は、その昔近所で種を貰って育てたもの。毎年剪定はするのだが、木が古くなったせいかこの所花数も少なく、匂いも弱い。それで今年はよそのお宅の蝋梅をじっくりと観察してみた。その結果、どうも我家の蝋梅は太くなりすぎているようだと気づいた。きれいに咲いている蝋梅は、どこも比較的低い位置から枝を伸ばし、樹高と比べると幹が細いようだった。ということで、今年は根元から二本出ている太い幹の一本を低い位置で切ってみた。結論が出るのは数年後か、、、。(2014年春詠)

足止むる留守の庭先梅の花

前のお宅の裏にある梅のつぼみがだいぶ膨らんでいます。緑がかった白梅です。ここは留守だろうがそうでなかろうが、思い出しては見に行きます。掲句は例によって散歩途中の留守宅、ゆっくりも見ていられないのですが、、、。(2014年春詠)

田起しや道に土くれ撥ね上げて

いよいよ農作業が始まりました。散歩の途中の道がトラクターの撥ね上げた土で歩きにくいほどになっています。トラクターはまだ汚れておらずきれいです。面白くて見ていたら、運転されている方がトラクターの上から会釈してくださった。こちらもあわてて会釈を返したのだが、おしゃれなサングラスでどこのどなたか分かりませんでした、、、。(2014年春詠)

「咬みます」と札つけし猫うららけし

どういう訳か最近我家の近くに猫の姿がなく、おかげ様で今年は静かな春となっています。掲句は久米南町誕生寺の寺務所で見かけた猫です。よく太っていかにも人懐っこそうなので近寄ってみると、首に、、、。(2014年春詠)

残雪の風に晒されゐる山辺

国道429号線を走って津山から倉敷に行くと、峠を二つ越えるようになる。その一つ目の峠に「道の駅かもがわ円城」がある。津山の自宅周辺には雪が無くても、この一つ目の峠辺りのちょっとした日陰には雪が残っていることが多い。掲句は昨年の二月、里雪で県南のほうが雪が多く、峠を越えてからも何箇所もの道端の竹やぶに雪折れが見られた。人と一緒で、県南では竹も雪に慣れていないのかと思ったが、まさかそんなことは無いだろう、、、。(2014年春詠)

飛行機を音の追ひかけ冴返る

子供時代を過ごした実家は山の隙間のようなところにあって、空が近かったせいか飛行機がずいぶん低いところを飛んでいたような気がする。それに比べるとこの辺りでは高いところを、それも定期航路でもあるのだろうか、数も多く飛んでいる。映像と音だから絶対に音が早いことは無いのだが、その音の遅れ方は、風の方向と強さによってずいぶんと違う、、、。(2014年春詠)

末黒野と同じ色して二羽の鳩

焼こうとして焼いた野も不注意から焼けた野も、焼けてしまえば皆同じで、しだいの見慣れた風景になって行く。毎年この時期になるとそんな野が増えていく。まだらになった野に動いているのは二羽の鳩だった。番だろう、付かず離れず、まるで保護色のように焼けた野に溶け込んで動いていた、、、。(2013年春詠)

山頂へ車登れず山笑ふ

例によって知らない山道を走っていると、ふと見た山上に建物とパラボラアンテナが見える。なんだろう(?)行ってみるかと、ちょうど走っていたところが麓の舗装された新しい道だったこともあって、そこを目指すことにした。ナビを見てもそれらしい建物は無く、そのうち上り口があるだろうと思っていたが、一向にそれらしいところが無い。そうこうしているうちに上りだった道は下りになり、気が付けば国道まで出てしまった。まあこんなもんだろう、、、。(2013年春詠)

薄氷に粉砂糖ほど春の雪

傷んだ舗装路に出来た水溜りに氷が張っている。その上だけにうっすらと雪が、ちょうど粉砂糖をまぶしたように残っている、、、。これがもう少し寒くて雪がもう少し多いと、氷の所在が見えなくなる。こうなると危ない。無意識に載ったとたんに支点を失ってひっくり返り、後頭部を強打することになる、、、。(2013年春詠)