軽トラに猪の転がる杣の道

句会への道すがら、ちょっと寄り道をしているうちに細い山道に入ってしまいました。その細い道路脇に寄せて止められた軽トラックが一台、人の気配は無く、前面には古びたシルバーマークがついています。何とか通れないことは無いかとスピードを落として、すれ違おうとして驚きました。荷台に転がっていたのは猪です。見間違いかと思い、バックして確かめましたが、確かに猪でした。それも巨大な、、、。(2014年冬詠)

猪出でしことは日常婆笑ふ

岡山県中部の山中に本山寺という私の好きなお寺があります。合歓の会の方々と吟行したおりに、たまたま傍の民家のお婆さんと話す機会がありました。家の裏側の畑の、真新しい猪の堀跡を「いっつもの事じゃけえ。よお知っとるもんで。こかあ、じゃが芋を植えとったけえなあ。小めえのが残っとるんじゃが」と笑いながら説明してくれました。いろいろ話しているうちに「息子と一緒に住んどったんじゃが、息子のほうが先に逝ってしもうて、一人になったが、、、」という事も聞き、それからというもの気になっていたのですが、先日訪ねると家はもう空家になっていました。家の裏側の畑には、相変わらず真新しい猪の堀跡がありました。(2010年秋詠)