露天湯に指のふやけて秋の風

確か松江あたりの温泉。町内会の旅行で、出雲大社まで足をのばして温泉旅館で食事と風呂という慰安旅行の定番のコース。露天湯と言っても旅館の庭にある周囲を竹垣ふうの塀で囲った風呂、それでも気持ちよかったなあ。そのメンバーも何人かはすでに鬼籍に、町内の旅行も財政難で久しく無い、、、。(2011年秋詠)

草むらの箱に捨猫うそ寒し

我が家の側の細い道も今では車が多くなって困っていますが、以前は本当に寂しい田圃の中の道で、時々捨て猫や捨て犬があって困っていました。見ると可哀そうになるので、草むらの中で声がしても知らん顔で通り過ぎていました。最近は賑やかになったせいか捨て猫や捨て犬はなくなりました。そのかわり日々ごみが、、、。(2001年秋詠)

生垣の南瓜蔓ごと引き寄する

ハロウィンも定着してきましたね。ちゃんとカレンダーに載っています(隣に仏滅の文字も)。日本に来ると何でもお祭りになりますね。我が家はしませんが、散歩の途中で玄関脇に例のカボチャを見かける家もあります。掲句は昨年のカボチャの収穫です。今年も採れました。まだ二つばかり残っています。冬至までもてばよいのですが、、、。(2015年秋詠)

境内の小さき稲荷や黄葉降る

近くにある小さな神社。その境内の裏手にあるさらに小さなお稲荷さん。お稲荷さんだが朱塗りの鳥居は無い。社の大きさに比べると立派な置物の狐が二頭。これがなければお稲荷さんとは気づかないだろうと思う。だがしかし、そのさらに裏手の茂みの中には本物の狐が住んでいる。何かの拍子で見かけると、こちらもびっくりするが向こうもびっくりするらしい。お互いにしばらく立ち止まり、慌てて先に隠れるのは狐のほう。お稲荷さんの傍で見かける狐だから神様のお使いかも知れないが、やせ細っている、、、。(2001年秋詠)

籾殻の火に道草の塾帰り

徒歩通勤だった会社からの帰りに見かけた景。籾殻は何日もかけて焼かれる。田の中にうず高く積まれた籾殻はちょうど火山のようで、その頂あたりから煙が出る。日暮れてくるとちょろちょろと赤い火が見えるようになる。まるで火山の模型のようで楽しい。ついつい遊んでみたくなる、、、。(2001年秋詠) 

秋の日や手錠の人のうつろな眼

これも古い句です。大阪への出張の途中、トイレ休憩に寄った高速道路のサービスエリアで見かけた景です。護送途中だったのでしょう、トイレから出て来た人のどこを見るでもないような目、手錠、後に目つきの鋭い屈強そうな人、、、。(2000年秋詠)