猪罠を閉めて迎ふる御慶かな

「知り合いの猟師に頼まれた」とかで、父が場所を貸し実家からほど近い所に猪罠が出来たのが前年のことです。猪が入ると猟師が来て処分し、場所代として肉を置いて行く、という段取りでしたが、ずい分入ったのでしょう、当時は帰省する度に猪肉を持たされました、、、。子どもの頃にも猪罠を見たことがありますが、その猪罠は、山の中の広場に太い丸太で砦のような囲を作った、何となく時代劇の一場面を見るような、子ども心をくすぐる代物でした。それに比べると現在の猪罠は、動物園の猛獣の檻のような、鉄製で冷たい無機質なものです、、、。掲句は正月で帰省し、気になって聞いた時の句、いくらなんでも正月から殺生はないよね、、、。(2001年新年詠)

縁起物ほどの御降ありにけり

愛犬もみじの楽しみと言えば食べることと散歩。どちらが大切かと言うと食べることで、食事の前に散歩に出ると、早々に切り上げて帰ろうとする。食事の後に出ると、小一時間かけて、隣の隣の町内ぐらいまでは行く。食事は決まった時間にしか貰えないが、散歩はうまくすれば連れて行ってもらえるからと、私が家にいる間はたえず狙っている。私が二ヶ月間四国に行っていた間はどうしていたかと聞くと、知らん顔して寝ていたというから、、、。さて初詣から帰って、二度目の散歩に出ようとしたらパラパラと御降があった。一応傘を持って出たが、傘を差すほどでもなく御降は終った。御降は豊穣の前兆と言うから、まあこれも縁起物で、多少はあった方が良いのだろう、、、。(2012年新年詠)

手相見の佳きことばかり初詣

明けましておめでとうございます。本年もかわりませずご愛読のほどをお願い申し上げます。もう二十年を越えますが、初詣は毎年真庭市の木山神社へ行きます。昔は吹きっさらしの本殿でお祓いを受けましたが、今は本殿の風除けはもちろん、立派な社務所が出来て、広い暖房の効いた部屋でお祓いの順番を待ちます。もちろん霊験あらたかです、、、。さて、石段を登りきったところにお店が並びます。その中に毎年同じ鯛焼の店が二軒出ますが、なぜか片方ばかりが繁盛して長蛇の列が出来るのです。もちろん我家も多いほうに並びます。焼き立ての鯛焼って美味しいですね、、、。でも、本当にこちらが美味しいかというと、ある時他の縁日で見かけたこの鯛焼のおっちゃんが、「ここはさっぱり、、、」といった顔で、しょんぼりと鯛焼をひっくり返していたので、まあなんとも言えません。近くには長蛇の列が、、、。(2011年新年詠)

つごもりの氏子が囲む大焚火

どこの神社にでもある風景です、、、。大晦日までお付き合い下さいましてありがとうございます。一年間は切らさずに、と思って書き始めたブログです。何度かトラブルはありましたが、皆様の励ましに助けられ、ぼちぼちゴールが見えてきたような気がしています。本当にありがとうございます。良い年を迎えられ、またお付き合い下さいますよう、お願い申し上げます。(2002年冬詠)

店奥の蕎麦打つ音も年の内

「そば切り」というのは備中地方の物なのでしょうか。そば粉十割で作る自家製だから、必然的に切れやすく、太さも長さもバラバラと言うのが「そば切り」でした。年越し蕎麦もこの「そば切り」で、肉はかしわ、野菜たくさんの煮込み蕎麦、子どもの頃にはたいして好きでもなかった味ですが、今となっては懐かしく思い出します。最近はお店で食べさせてくれるところもあるようなので、一度食べてみたいと思っています、、、。どちらかと言うと「うどん」派です、、、。(2010年冬詠)

すす逃の床屋の椅子に沈没す

もう四十年近く同じ理髪店に通っている。通っていると言っても、そろそろと思い出してから腰を上げるまでに一ヶ月ぐらいかかるから、せいぜい年に四、五回ぐらいだろうか。「ずいぶん伸びましたねえ」「どれくらいになるかなあ」「三ヶ月、越えましたよ」と皮肉たっぷりに三ヶ月を強調して言われる。会話と言えばそれぐらいで、後は黙って至福の時間に浸れるのがこの理髪店の好いところで、多少高額だが迷わず通っている、、、。そんなだから11月ぐらいから、「来年も来てくださいね」「よいお年を」と挨拶を交わして帰ることになる、、、。(2011年冬詠)

神木の朽ちたる幹に注連飾る

木はいつの時点で神木となるのだろうか。神社の境内や神域に生えればすべてが神木かというと、そうでもない。何かの曰く付きの木は別にして、神社の境内や神域に生えた一般の木は、ある程度(たぶん人間の寿命ほど)年数を経て、見た目が立派になった時点で、何かの拍子で神木になる、、、。「おいおい、余ったからゆうて、注連縄あ勝手に張っちゃあいけんで。また神木が増えとるがな。神木になったらなあ、もう切るわけにゃあいかんからのう、後々まで困るで。」とは近所の長老の言葉、これが何かの拍子の正体らしい、、、。確かに神木を切って事故にあった話はよく聞く。触らぬ神に祟りなしで、とにかく古い注連縄は取り替えて新年を迎えるのが役員の仕事、、、。掲句の大きな神木、老朽化で危険なため近年クレーン車を使って伐採された。もちろん、お祓いをした上で、、、。(2001年冬詠)

初雪や畝真つ直ぐに葱畑

葱畑も冬の季語ですが、確信犯ですのでご容赦を、、、。畑にも作られる方の性格が表れますね。きっちりと作られた畝に、きっちりと植えられた葱、それだけでも感心するのですが、それが初雪の白さの中で、よけいにきっちりとして見える。プロなんです、この方は、、、。今年の初雪は12月9日でした。10Cmぐらいは積っていたでしょうか。(2002年冬詠)