着ぶくれて記念撮影押し合へり

津山市の文学の俳句部門で賞をいただいたのが2002年です。文化センターの会議室でセレモニーがあった後、ホールの玄関前に出て記念撮影がありました。西東三鬼の「花冷・・・」の句碑が見えるあたりです。その時に出来たのがこの句です。花冷どころか11月の寒い日でした、、、。その前年に佳作を頂きましたが、その時には「俳句はネットで、、、」と言うと、何人かの方から奇異な眼差しが返って来ました。一年経ってやっとネットでの俳句が認知され始めたのでしょう、この時には素直に受け入れていただけました。(2002年冬詠)

夜神楽の神と人とに同じ闇

神楽は宵祭の深夜まであります。神社の本殿が舞台と客席になります。本殿の外にも人が溢れ、さらにその外の一角で、焚火の火が赤々と燃え上がっています。一杯機嫌の大人たちは、炎の熱に顔を背けながら、最近見てきた神楽やら、神楽太夫の評価やら、神楽談義に余念がありません。神楽に飽いた子どもたちは、そんな大人たちの間にもぐりこんでは暖を取り、また本殿に戻って行くのです。(1999年冬詠)

夜神楽の酔のまはりし足運び

美作地方の祭は「だんじり」が主役になりますが、私の育った備中地方では「備中神楽」が主役となります。娯楽が少なかったこともありますが、子どもの頃から慣れ親しんだ太鼓の音を聴くと、今でも心がはやります。どうしても贔屓目に見てしまうのですが、全国にいろいろな神楽がある中でも、備中神楽は最高です。(2000年秋詠)

一夜にて落葉の道となりにけり

紅葉から落葉へと、季節の足は速いですね。一晩風が騒いだ後の朝の散歩、並木道はすっかり落葉に覆われているのです。そうしてやがて、車が通り、昼間の風が吹き、夕方の散歩の時には、掃いたようなきれいな道に戻っているのです。(2010年秋詠)