怪しくなってきたなあ、と思っていたら急に降ってきた。あわてて吟行を切り上げて公園の坂を下る。舗装のない坂道は何となくすべりそうで自然と小股になってしまう。全員同じような足取りで坂道を下った。その足取りばかりが記憶にあって、傘を持っていたかどうか、そこの所が記憶にない。早島公園での句、、、。(2012年春詠)
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まんさくやダム湖に注ぐ川いくつ
ダム湖の水量が減り、周囲に土の色があらわになってくると、そこに多くの水跡が見えてくる。そのそれぞれがかつての小川だったのだろう。いったい幾つの川があったのだろうか。二本が一本になり、また一本が加わり、しだいに太くなった川辺に村が出来、人々のささやかな営みがあったのだろう。その全てを飲み込んで今ここに一枚の湖面がある。そんなことを考えながら国道429号線を走っていたときの句、、、。(2013年春詠)
男の背乗せ春耕のトラクター
それだけ集中していると言うことだろうか。トラクターの運転席でひたすら前を向いて進んでいる男の後姿には人生を感じさせるものがある。仕事をしていた頃は休日や平日の会社帰りに暗くなるまで続くトラクターの音に、田圃が無くて良かったと思ったものだった。それがどうだ、今では散歩の途中で見かけるトラクターに乗った同世代の人の後姿を羨ましく思うようになってしまった、、、。(2013年春詠)
白木蓮の一樹に光さそはれし
と言うことで今日より三年目に入りました。掲句、西川緑道公園の白木蓮、見上げるとちょうど樹の頂に太陽の光があたり輝いて見えた。まるで白木蓮の花が自ら光を誘っているような印象を受けた。白木蓮と辛夷、よく似ていて見分けが付かないことがある。辛夷のほうが少し花びらが薄く細め、白木蓮はぽってりとした感じ、、、。(2013年春詠)
一身に光あつめて囀れる
やっと今日で二年間書き続けたことになります。読んでくださった皆様に感謝です。ありがとうございました。ページ内には表示していませんが、ヒット数も35000を超えました。中には歓迎できない訪問もありますが、それも数の内、ありがたいことです。いつまで続けられるかわかりませんが、それまでよろしくお願いします、、、。(2013年春詠)
高階の体操教室鳥曇
高階でも体操教室でもない我家の二階でプールへ行く前のストレッチをする。と言うほどではないが、あちこち身体を動かしておかないと後で微妙な影響が出てくることがある。いつもではないのが厄介で、油断して横着をすると出てくる。昔はこんなことはなかった。何をするにもぶっつけ本番ですんだが、やっぱり年齢には勝てない、、、。(2011年春詠)
白梅の白より白きうす緑
最近河原に軽トラックで柴犬を連れてくる老人が居る。柴犬はまだ子犬のようだが、老人といい勝負が出来るぐらいの力はあり、吠えはしないがこちらに興味があるようなそぶりを見せる。「こんにちは」「そのいなあ(犬は)オンかメンか?」「メンですよ」「そんなら大丈夫じゃ、こりゃあオンじゃけえメンなら咬みゃあせん」そう言いながらすれ違った。その次に会うと、「こんにちは」「そのいなあオンかメンか?」と、全く同じ内容の話。三回目も同じ、どうやら老人の記憶の中に私と私の犬は全く残っていないらしい。四回目には早めに避けてしまった。車にはシルバーマークが付いていたが、なんだか寂しい、、、。(2013年春詠)
置物の鳥のをりけり庭の春
我家の庭には様ざまなものがやって来るが、その中のひとつ、置物の鴨です。鳥やうさぎは日常茶飯事なので驚かないが、残業から帰って薄暗い庭の隅にこちらを見ている白雪姫の小人を見つけた時には心臓が止まるかと思った、、、。(2011年春詠)
春昼の鳩にまぎれし雀かな
西川緑道公園での句、群れている鳩の中に混じって餌をついばむ雀が一羽、なんとも春らしい感じがした。公園は鳥たちにとっても公園なのですね、、、。(2013年春詠)
地虫出づホルン響きし閑谷に
今日は啓蟄です。そろそろ虫の動きも活発になって来る頃です。掲句は閑谷学校吟行での句、梅がきれいでした。ホルンの音も古い建物や山々にマッチして良かった。閑谷の虫たちはきっとあの音で気持ちよく目覚めるのでしょう、、、。(2011年春詠)