耕して十歩に満たぬ畝作る

通っているプールの二階がジムになっています。そのジムに通っている会社の先輩に時々会います。ずいぶん前に辞められた方なので、年齢も大分上だと思いますが若々しくお元気そうで、最初に声をかけられた時にはどなたか分かりませんでした。「どうされているんですか?」とお聞きすると、ジムと畑に通うのが日課だそうです。「広くはないんだが借りてね、楽しいよ、たいした物は出来ないけどね、、、」と活き活きと話されていました。それでという訳ではないのですが、私も今年は何か植えてみようと思っています、、、。(2002年春詠)

啓蟄の出でよ出でよと鳥の声

今年は二月早々にアスファルトを這う蚯蚓を見つけて驚きましたが、結局二月は寒かったですね。寒いのは苦手です。暖かいほうが好きです。やっと待ちに待った春が来た感じです、、、。掲句の年の啓蟄は暖かで、鳥の声に溢れていました。鳥たちの声は、まるで土の中の虫たちを誘っているように聞こえました、と言うのは言い過ぎでしょうか、、、。(2011年春詠)

ひと所明るさ残し春時雨

冬の間は散歩の途中で雲行きが変わろうが、降ってくるのは雪だから全く気にならなかったが、春になるとそうは行かない。しまったと思っている間に、時雨の雲は雨の形を見せながら迫ってくる。それでもよくしたもので、濡れるほどでもなく、明るいままに通り過ぎることが多いのも春時雨。今のうちに、と犬を急かして家路を急ぐ、、、。(2013年春詠)

木蓮の芽のとがりたる空の青

会社に行く途中にあった大きな和風のお家。家の前は田圃で、農業もしながら他のこともされているような、余裕の見て取れる佇まいだった。田圃に面した庭にこの木蓮はあった。毎年きちんと手入れをされるので、毎年きれいな花をつけた。先日久しぶりにこの道を通ったら、田圃に幟旗が立って、工事が始まっていた。幟旗には某マンション経営の会社の名があった。ここにもマンションが出来るのか、マンションなんか建てられなくても、と思ったが、、、。この道を通ることもほとんど無くなり、この木蓮を見ることも無いとは思うが、隠れてしまうのは寂しい、、、。(2010年春詠)

蔵の窓いづこも小さし風光る

吟行の集合場所、早島駅近くでの句。早島は初めてと思っていたのに、駅前の景観にどうも見覚えがある。そう思って考えていたら思い出した。確かに七、八年前に一度仕事で来たことがあった。もう少し春の進んだ頃で、ひどい雨の日だった。駅前から延びる広い道路が工事中でぬかるんでいた。駅も工事用のパネルで囲われていたように思う。たいした仕事ではなかったので忘れていたが楽しい内緒の秘密めいた仕事でした、、、。(2012年春詠)

窓枠をビシと鳴らして春一番

あれっ、今年の春一番はいつだったろうと思っています。掲句はまだ働いていた頃の春一番。古い建物なので、強い風が吹くとあちこちで音がします。いきなり建物にぶつかって来た風に、事務所の窓が壊れそうな音を立てたときの句です。(2011年春詠)

犬ふぐり地に咲く星と思ひけり

犬ふぐりの咲き始めって、ちょうど夕空に星が出始めるのと同じようだと思いませんか。最初の一つは偶然見つけるのです。そして一つ見つけると次を探したくなって、次から次へと、ちょうど夕空に増えていく星を探すように、探してしまうのです、、、。(2011年春詠)

一行で繋がるネット春寒し

便利になりましたね。一行で、と言うよりもワンクリックで繋がるのですからね。反面、溢れかえる情報の取捨選択が大変です。ウイルスとか成りすましとか心配事も増えました。それと、パソコンはいつ壊れるかも知れません。必要なデータはバックアップをとるようにしましょう。もっと大事なデータは、やはりアナログに戻って、紙に残したほうが良さそうです。と、自分に対する戒めですが、これがなかなか出来ない、、、。(2011年春詠)