ひとところ水脈の輝き鴨の陣

もう五日ぐらいになるだろうか、老釣師が毎日同じ場所に陣取って鯉を狙っている。邪魔にならないように会釈だけで通り過ぎるのだが、数メートル過ぎたところで川を覗くと三尺ぐらいはありそうな大鯉がかすかに尾びれを動かしながら身を潜めている。ひょっとして老釣師が何日も狙っているのはこの大鯉かも知れないと思い、老釣師のほうを見るとじっと糸の先の水面に集中して、こちらも動かない。まるで鯉と老釣師の間に一本の緊張の糸が張られているような気さえした、、、。(2015年冬詠)

冬桜ガイド掲ぐる団体旗

これも古い句です。ガイド、団体旗と言えばバス旅行、どこへ行ったんだろう?と自分でも詠んだ時の記憶がない。そんな事を考えながら見ていたら近くに答の句がありました。それは明日のお楽しみ、、、。(2000年冬詠)

凍雲や太古海てふ街の空

私の実家は山の中ですが、実は太古の昔は海だったのです。それが証拠に近くの山の上には丸い小石を含んだ岩がたくさんあります。貝の化石が出るのもその証拠ですね。掲句は倉敷阿智神社から街並を眺めて詠んだ句です。昔海と言ったって我が田舎に比べれば若い若い、なんて強がったりして、、、。(2015年冬詠)