路地奥の井戸ある暮らし夏つばめ

下津井吟行での句。細い路地を入って行くと今も古い共同井戸が残っている。すぐ後には急斜面の山が迫っており、その斜面にへばりつくように民家が並んでいる。どの家にも所せましと洗濯物が干され、路地を器用に燕が抜けていく、、、。(2018年夏詠)

炎昼の鉄管ビール一気飲み

昔ある人から聞いた話で、その人が若かった頃に某ビール会社の近くに住んでいて、その会社の塀には外に向けて蛇口が付けてあり、ひねるとビールが出て来た。だから毎日仕事帰りにそこで一杯、とか、、、。たぶん嘘でしょう。掲句はただの水、、、。(2018年夏詠)

黒南風や掃けばまた散る山法師

我が家にある源平山法師、同じ木から白と赤の花が咲く。赤と言ってもピンクに近い上品な色。赤の出る確率は年によって違う。天候のせいか今年は赤が多く、十分に楽しませてもらった。山法師の花は咲き始めは小さく、長い期間をかけてしだいに大きく成長していく。梅雨の頃が散り時で、その頃にはもう衰えた花びら(苞)の中心に青い実が出来ている、、、。(2018年夏詠)

大鯰土管の口にひげ覗く

働いていた頃、会社の横に大きな農業用の水路があった。田植から夏の間は水が豊かで、大きな鯉や鯰が上って来た。季節になると時々抜け出しては見に行った。一つの土管の穴に何匹もの鯰が住んでいるらしく、一匹が入ると交替するように一匹が出て来たりした。鯉も50Cmはありそうなものが上って来た。一度釣ってみたいと思っていたが、思っている内に退職してしまった、、、。(2018年夏詠)

黒南風や昼は「野ばら」の楽流れ

正午になると少し離れたところにある緊急放送用のスピーカーから電子音で「野ばら」の曲が流れてきます。夢中になって庭いじりなんかしている時には便利です。ちなみに朝六時は「みかんの花咲く丘」、夕方五時は「故郷」です、、、。(2018年夏詠)