給水車休ませてゐる花の下

吉井川の支流の小さな川沿いに桜並木がある。どこにでもある桜並木で今時めずらしくも無く、まして平日ともなれば、満開の花の下にも人影は無い。ちょうど昼時だったか、通りがかるとその花の下に給水車が一台止まっていた。オレンジ色の給水車が不思議と満開の桜に合い、花の下で昼寝でもしているように見えた。しばらくして用事を済ませて再び通りかかると、給水車は二台に増えていた、、、。(2013年春詠)

学校のチャイム遠くに風光る

そろそろ学校が始まります。私が住んでいる所は学区の外れなので、校庭の声までは聞こえませんが、チャイムの音なら風向きによっては聞こえてきます。ホントに遠くの小さな音です、、、。私の通った小学校は古い木造で、屋根の上にはチャイムではなくサイレンがありました。サイレンは朝昼晩の三回、大きな音で地区中にも時刻を告げていました。2キロメートルほど離れた私の実家でも聞こえるような音でした。たまたま帰省して、父から廃校になることを聞かされている時に、合わせたように昼のサイレンが聞こえてきたことがあります。花冷の頃でした、、、。(2013年春詠)

遠くより風の生まれて雪柳

プールへ行く途中の踏切の手前にしゃれた平屋のお家がある。ちょうど踏切に合わせてスピードを落としたところでよく見える。生垣の端に咲いている白い花は雪柳だろう、と思っていると奥まった玄関脇の大きな白木蓮が日に入る。おっ!と思った瞬間には車庫の傍の白椿が。その時にはもう前へ向き直る途中だったが、庭の奥のほうにも白い花が見えていた。あれも雪柳だったかなあ、と想いだしている、、、。(2013年春詠)

母となる強さほの見ゆ孕猫

お腹が地に着きそうになった雌猫がゆっくりと目の前を横断していった。まあ、あれだけお腹が大きければ、動きが緩慢になるのも無理はない、と納得の出来る歩き方だった。堂々として、少しばかり得意そうにも見えるのは、母となる者の強さゆえだろう、、、。(2013年春詠)

地下道に春の寒さの残りをり

岡山駅の東口から西口へ通じる地下道、階上に出来た連絡通路の華やかさと比べると寂しいが、懐かしさもあって時々通る。どこの地下道もそうだが、春になってもいつまでも寒さが残り、天井が低いせいかやたらと靴音が響く、、、。(2013年春詠)

花嵐そば屋の幟ちぎれさう

寒い日だったなあ、風が強くて。トイレ休憩に寄った道の駅の、脇にある小さな蕎麦屋の幟旗が、千切れそうに揺れていた。咲きかけた桜の若木が、その風に必死に耐えているように見えた。「がんばれ!」「散るなよ!」この時季に決まってある悪天候の一日、、、。(2013年春詠)

橋いくつくぐれば海や花筏

川があれば花びらが流れてくる。離れ離れだったり繋がったりと、形態は様ざまだが、花筏とはよく言ったものだと思う。掲句、岡山の西川緑道公園での句。西川緑道公園には橋が多い。流れも豊かだ。花筏も勢いよく流れていく、、、。(2013年春詠)