勝山は家の下より春の水

昨日の続きのようですが、こちらは数年前の句です。古い町並みの通りに面して沢山の雛人形が飾られる行事があります。古い雛飾が見たくて行ったこの日も、時折霙が降ってくる寒い日でした。その賑やかな通りの外れのほうに、こんなところがあります。結構幅広のきれいな用水が、家のしたをくぐってとうとうと流れているのです。早春らしい風景でした、、、。(2010年春詠)

水ぬるむ川舟川におろされて

冬の間岸に上げられていた舟が川に下ろされる。国道53号線を岡山へ走っていくと、旭川沿いでよく見られる風景。やっと春が来た感じがする。カヌーが増えて来るのはもう少し先かな。こちらは明るい色が春を誘う、、、。(2010年春詠)

春寒やかたむき置かれ石祠

石祠にも大小いろいろありますが、黒い色の小さなよくある石祠です。大きな石の上に置かれたり、大木の走り根の上だったり、多かれ少なかれ傾いていることが多いですね。いつも石祠で詠みますが、実際は焼物のような気がします。神様に対して失礼ですが、昔の炬燵が良く似た色や形をしていたと思いませんか?石祠は一年中、何かにつけて詠んでいるような気がします。春には春の石祠です、、、。(2010年春詠)

野火走る消防団員したがへて

後楽園の芝焼きであったり、若草山の山焼きであったり、いかにも春を迎えるのにふさわしい行事という感じがして、テレビでの報道を見る度に一度間近で見てみたいものです。こういう時にかり出されるのが消防団員ですが、火事ではないので余裕が見受けられますね、、、。近所の河原や土手が時々燃えることがありますが、これは煙草の火の不始末であったり、焚火の火が移ったりで、これはいただけません、、、。(2010年春詠)

ピアニカを片手に少女春隣

ピアニカが小学校に導入されたのはいつだったろうか。私の時代はまだ普通のハーモニカだった。ほどなくピアニカに変わったように思うが、記憶は曖昧。ピアニカは商品名、正式名称は鍵盤ハーモニカと言うが、俳句で使うには字数が多すぎる。ピアニカでご容赦を、、、。掲句、少女がピアニカを演奏していたわけではなく、駆けていく少女の片手にピアニカがあっただけ。今時珍しく弟を連れて毎日走り回っていた女の子、少し成長したのかな、最近は見かけることが少なくなった。(2010年冬詠)

待ちきれぬ土竜の起こす冬の土

いよいよ春が近づいてきましたが、土竜は新年になるともう活動を開始していて、田圃の中や公園の芝生に、その跡が見られます。管理する立場ではやっかいな動物ですが、春を待つ身にはうれしい春の足音の一つですね。(2010年冬詠)

雪だるま目鼻くずれて泣きさうに

雪晴の日は日暮れても何処となく明るさが残っています。早めに残業を終えて歩いて帰ると、そこここに子どもたちの遊んだ跡が残っています。スコップや橇が放り出されたままだったり、作りかけの小さなかまくらだったり。掲句は途中にある公民館の広場にあった、解けかけた雪だるま、、、。(2010年冬詠)

躓けば犬が振向く寒暮かな

老いは否応なしにやって来る。もともと子どもの頃から足は上がっていなかったようで、度々祖父に注意された記憶がある。だからと言って人より躓き易かった訳ではなく、長い人生人並に転ばずに生きてきた。それが、ちょっとしたことで躓くようになったのがこの頃でした、、、。退職してからは、プール通いを続けていますので、すこぶる快調です。ずいぶん若返ったような気がします、、、。(2010年冬詠)

寒釣師映る姿も動かざり

昨年の暮から毎日、同じ場所で鯉釣をしている老人がいる。よく知っている人なので、挨拶をして釣果を聞いてみたいと思いつつ、人を寄せ付けない、水面の一点を見つめているその姿に圧倒されて、黙って静かに通り過ぎてしまう、、、。(2010年冬詠)