実家の近所の一人暮らしのお婆さん、亡くなった私の母と歳はそう離れていないと思いますが、相変わらずお元気で、天気が良ければ曲がった腰をさらに曲げて畑をされています。家は私の実家から直線距離で30mほど、正面ではありませんが良く見えます。おかげで防犯カメラが要らないぐらいに良く観察されています。どこでも年寄りの楽しみは同じですね、、、。(2009年冬詠)
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冬座敷一人灯して一人消す
実家での句。父が亡くなり、母が施設で暮らすようになってからは、必然的にこうなりました、、、。(2010年冬詠)
寒の雨窓にムンクの顔がある
特に何があった訳でも無く、引き継ぎの仕事は順調に進んでいた。むしろ順調すぎて、外を見る時間が増えていた。ひどい雨だった。二階にある事務所の窓は一日中雨に打たれ、外は午後三時を過ぎるともう薄暗くなっていた。窓ガラスはしだいに透明度を落とし、しだいに室内の様子が映るようになって行った。窓際に立つと、パソコンに向かう女子社員の横顔を背景に、自分の顔が映っていた、、、。<阿南7>(2011年冬詠)
下町に音のいろいろ花八手
機関区の周りに多いのは、やはり鉄道関係の会社や工場ですが、それ以外にも小さな町工場がたくさんあって、いろいろな音が通りに漏れてきます。突然シューッと音がして、道路脇の溝に伸びたパイプから蒸気が噴出したりすることも、、、。(2012年冬詠)
機関区の大戸閉ざされ冬ざるる
あれ~、秋には大きな戸が開いて、中に何台も電車の車両が見えたのに、冬には閉められるんだ。と思いながら周囲をうろうろしていると、すぐ側の高架をマリンライナーが通過して行きました、、、。機関区の中に社員食堂があり、「一般の方もどうぞ」、と書いてあるので昼食を食べに入りました。私以外に一般の人は見当たらず、現役の方々の間に入るのは肩身が狭い感じがしましたが、鉄道マンに混じって「うどんセット」を食べてきました、、、。味は私には懐かしい、いわゆる社員食堂の味でした。値段は安いです。その上「ご自由にどうぞ」と書いて温かいコーヒーが置いてありましたので、ついでにこれもいただいて帰りました、、、。鉄道マニアではありませんが、岡山駅の西口から機関区があるこの一角は楽しいところです、、、。(2012年冬詠)
近道に抜ける公園冬菫
平日の昼間は居ないのをいい事に、娘の駐車場へ車を置き句会へ向かう。大通りを渡り、民家と町工場が混在する脇道に入る。しばらく歩くと一角に小さな公園があり、ここのトイレを借用する。トイレは道路側の手前にあり、生垣の角に少しだけ隙間が設けてある。看板のある入り口は角を曲がって、トイレから対角線のあたりにあるので、さしあたり裏口といったところか。たいてい人影はない。大きな楠木が一本、あとは滑り台やらブランコやら花壇やら、動物の形の乗り物が数体。トイレから出ると迷わず公園の中を斜めに横切って行く。ここを過ぎるとJRの機関区がある一帯に出る。(2012年冬詠)
躓けば犬が振向く寒暮かな
老いは否応なしにやって来る。もともと子どもの頃から足は上がっていなかったようで、度々祖父に注意された記憶がある。だからと言って人より躓き易かった訳ではなく、長い人生人並に転ばずに生きてきた。それが、ちょっとしたことで躓くようになったのがこの頃でした、、、。退職してからは、プール通いを続けていますので、すこぶる快調です。ずいぶん若返ったような気がします、、、。(2010年冬詠)
雪降つて皆平等に白き屋根
たまに降るからこんな事が言えるので、雪深いところで生活すると、厄介な代物以外の何物でもないとは思いますが、景色を一変させる雪は昔から好きです、、、。(2009年冬詠)
枯山と枯山からす鳴き交す
これも実家での句。Vの字の底のようなところですから、両側に高い山があります。その両側の山で鴉が鳴き交わすことが出来るのですから、どんな地形かは想像出来ると思います。寂しいことですが、すでに限界集落になりつつあります。その一因は私にも、、、。(2009年冬詠)
川音の子守唄ほど山眠る
これは実家での句。我家から数十メートルも行けば山の中になります。その山から流れ出た小さな谷川は、我家の前を通り小川へと続きます。鉄分の多いきれいな水で、かつては我家はもちろん、近所の大切な生活用水でした。小さな谷川ですから冬には水量が減ってしまいます。水音も小さく、やさしくなってしまいます、、、。(2009年冬詠)