久米南町は川柳の盛んなところです。いたるところに川柳の句碑があります。中でも津山線の弓削駅からほど近いところにある川柳公園とそこに続く遊歩道の川柳の小道には沢山の句碑があります。ほど近いですが、川柳公園があるのは山の中腹で、そこに続く川柳の小道の坂は急です。川柳の小道を通らす、車で公園まで行けますが、川柳の小道の急坂もまた味があります。足に自信のある方は覚悟して歩いてみてください、、、。掲句はその急坂での句、鬱蒼とした森に不安を感じながら初めて登ったときの句です、、、。(2009年冬詠)
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対岸の犬の遠吠え寒昴
遠吠えは犬がかつて野生であった頃の名残りなのでしょうね。冷え切った冬の夜空に向かって、まるで自己主張しているかのような犬の遠吠え、対岸ゆえですが、聞きほれてしまいます、、、。ちなみに、我が愛犬のもみじは滅多に声を出しません。ストレスが溜まらないか心配で、鳴いたら褒めてやることにしています、、、。(2000年冬詠)
水鳥の尻の高さを競ひけり
年が明けて、散歩コースの水鳥が少し増えました。それでも三十羽ぐらいでしょうか。昨年よりはだいぶ少なめです、、、。日差の暖かい日の岸辺近く、本当は水草を啄ばんでいるのですが、それぞれに尻を上げてバタバタしている姿は、ユーモラスで可愛いものですね、、、。(2011年冬詠)
窓際につるす喪服や寒茜
小六誠一郎さんの句に「小春日の葬の家まで小半時」があります。私が初めて出た合歓の会の句会で、この句に共感できることをしどろもどろにしゃべった記憶があります。父が亡くなり、身体が不自由になった母の代わりに田舎の葬儀に出るようになった頃でしたが、田舎での葬儀は実際こういう感じでした。子どもの頃に通った道を、葬儀のある家まで記憶をたどりながら、小春日の中を歩いていくのです。人の死が哀しくないわけは無く、それは不謹慎な事ですが、私にとってその小半時は、死者からいただいたありがたい時間なのでした、、、。初めての句会で不安そうに見えたのでしょう、やさしく声をかけてくださった恰幅の良い紳士が誠一郎さんでした、、、。その誠一郎さんが亡くなられました。ご冥福をお祈りいたします。良き句友であり、人生の大先輩でした、、、。(2009年冬詠)
雪残る常行堂の萱の屋根
本山寺が続きます。常行堂は本堂と三重塔の間にあります。茅葺の古い屋根には、生えた草が枯れて、雪と一緒に残っています。部分的には補修もされていますが、葺き替えまでは難しいのでしょう、、、。名前が常行堂ですから、かつては多くの修行僧が行をしていたお堂なのでしょう。閑散とした中で一人、往時の華やかさに想いを馳せるのも良いものです、、、。岡山県の中山間部には本山寺だけでなく、修行の場であった古い寺が何ヶ所もあるようです。(2011年冬詠)
冬ざれや帽子褪せたる石地蔵
続いて本山寺。昨日の道に入る手前から石段を登ると、比較敵新しい観音像があります。その後に小さな石地蔵が何体かありますが、こちらは表情もはっきりとは見えないような古い石地蔵です。何年ぐらい経つのでしょうか、赤い毛糸の帽子もすでに色褪せて、苔が生えたりしています。(2011年冬詠)
走り根にすがりて冬の羊歯青し
これも本山寺での句。三重塔を過ぎて左の道を行くと、裏手の駐車場に出ます。その間の短い距離ですが、山を削って作った道の山側の斜面には、大きな走り根が何本ものぞいています。そして、それに縋るように生えた羊歯が、冬なお青い葉を見せています、、、。今年は歩き易いように、新しい砂利が入れてありました。(2011年冬詠)
山寺の閉ざし寒禽鳴くばかり
美咲町の本山寺での句。本山寺は私の好きな寺で、時々行きます。最初に行ったのは二十年ほど前になりますが、まだ道路も整備されておらず、田圃の間の道や細い山道を通って、山門の下に着きました。今は道路も整備され、山門の下に広い駐車場がありますが、当時は草ぼうぼうでした。三重塔のある一角は当時もきれいに整備されており、全く知識がなく訪れたものですから、異次元の世界に出会ったように驚き、塔を見上げた記憶があります。いつ行っても人は少ないですが、冬は特に少なく、鳥の声ばかりが聞こえます。(2011年冬詠)
傘の雪ガード下まで来て落とす
雪の日は徒歩通勤と決めていました。会社までは20分ぐらいかかったでしょうか。会社のすぐ手前に高速道路のガードがありました。いつもの路地を抜けて国道を渡り、このガード下まで来て傘の雪を落すのです。雪にもよりますが、20分も歩くと傘には重いぐらいの雪が積ることがありました。それをバッサリ落すのも小さな楽しみでした、、、。(2002年冬詠)
冬の道いつもどこかが濡れてゐし
県北の冬はこういう感じなのです。雪でも降ろうものなら、当分は残っているし、時雨であったり、霙であったり、乾かないうちに次が降ってくるのです。そして道は、いつもどこかが濡れているのです、、、。(2009年冬詠)