蝋梅の一枝柩を閉づる前

義母の葬儀は小さな部屋での家族葬だった。部屋に入ると線香とは違う香りが漂っていた。見ると祭壇に蝋梅が一枝挿してあった。「あ、これか、もう蝋梅が咲いているんだ」と思いながら手を合せた。その蝋梅を最後にそっと胸元に添えたのは義姉だった。もう一年、義母の葬儀での句、、、。(2019年冬詠)

枯葎何気なさげに獣道

道路沿いにある遊休地、何年も経つうちに草ぼうぼうになり、いつの間にか狐まで住みついているらしい。時々こちらに気づいて慌てて茂みに逃げ込む姿を目にすることがある。逃げ込んだのはこの辺りと探してみると、確かに枯草の間が少し広がっているようにも見えるが、はたしてこれが獣道なのかどうか。姿はもう無い、、、。(2019年冬詠)

大注連縄吊るす大竹空の青

阿智神社の拝殿前にでんと吊るされた新しい大注連縄、その注連縄を上で支えているのがこれも新しい真青な大竹、新しい藁の色と竹の緑、下がっている紙垂の白の対比が美しい。コロナ禍の一年、皆さまお世話に成りました。来年は良い年になりますように、、、。(2019年冬詠)

仕残して雨となりけり小晦日

昨年の小晦日の句です。「こつごもり」「おおつごもり」言いにくい言葉です。子供の頃は「つもごり」と覚えていて本当は「つごもり」だと分かったのは歳時記を見るようになってからの事でした、、、。と、ここで終わる所ですが「まてよ?」と思って辞書を引くと、なんと「つもごり」も載っているのです。 つもごり【晦・晦日】「つごもり(晦)」の変化した語。国語大辞典(新装版)ゥ小学館 1988 と言う事は、、、。(2019年冬詠)