すいつちよの足置いて行く青畳

開け放った田舎の家では、夜にはいろいろな訪問者があります。度々訪れるのがすいっちょ(馬追)です。しょっちゅう入ってきては、部屋の隅で突然鳴き出します。後足は太く跳躍力も強いのですが、なぜか脆く、逃がそうとしたりするとすぐに足が取れてしまいます。(2008年秋詠)

灯籠の一夜回りし灯を落とす

今年は母の初盆です。父の時は母がいましたので、母の言う通りに動いて済ませましたが、今度はそうは行きません。幸い近所にも親戚にも煩い人がいませんので、兄弟で相談して、簡単に質素に済ませることにしました。古いしきたりが悪いとは思いませんし、出来ることはやりたいのですが、なにぶんにも家を離れていると、やはり難しいことですね。(2008年秋詠)

峡の空狭し銀河の近かりし

以前にも書きましたが、私の実家は山と山に挟まれたところにあります。子どもの頃には街灯もなかったので、晴れた空には星が綺麗でした。峡を挟んで山から山へ、落ちて来そうな近さで銀河が流れ、涼み台に寝っころがっていると、いくつもいくつも流星が見えました。(2009年秋詠)

鬼やんまこの家の間取知るごとく

開け放った田舎の家を、鬼やんまが我が物顔に通り過ぎて行く。まるでこの家の間取を熟知しているかのように、堂々とした飛行だ。昔はよくあった風景だが、今はどうなんだろう。鬼やんまも少なくなっただろうな。(2009年秋詠)